前書き。
私は物書きでは無いため、こと稚拙な文書となるでしょう。
そのような文章が皆々様の貴重な時間、親から譲り受けた視力を奪うことに予めお詫びを申しあげたく思います。
どうかこの文章が人生において愛すべき無駄な時間となれば幸いでございます。文章の硬さは、皆様から思考力を。回りくどさは読後感を奪いたいがための、いわば駄々の様なものであるのでご容赦をくださいませ。
さて、昨今の騒動のお話です。
ありがたいことに私は今も音楽を続けているわけであります。その中でもやはり現場での公演(俗世の言葉で言えばライブ)というものは、どうにも至高の極地であります。
お客様に我々が培った演奏技術を見せる。単純に綴ればそれだけの話なのでありますが、そこには色々な感情、空気感が合わさり、毎回異なる演奏となるのです。まるで和菓子を作る様な繊細さを感じているのです。(洋菓子も繊細に作っていると思われるので配慮として記載しておきます。)
そんな老舗の味に革命が起きたのがつい某日。その日は「アイドル」という可愛さとダンスと歌唱力とプロ意識で作られた和菓子達と同じ舞台に陳列したわけであります。しかし我々とて老舗の味。安定した味わいをお届けしておりました。我が店の特色としては和装、いわば着物を羽織り演奏をするわけでございます。
帯が落ちたのです。
味が落ちるならまだしも、帯が落ちたのです。これはいけません。下手をすると、私の稚拙と淫猥と欲望と生命のねるねるねるねがチン列するわけです。
パティシエにそんなものを見せてはなるものかと、私は後ろを振り向きました。背中でセールストークをしたのです。さぞお喋りな背中だったでしょう。男は背中で語るのです。
家路に帰り、私は頭を悩ませました。
ねるねるねるねをチン列しない為に。
ただ、条件があります。
下着は履かない。これは老舗の味を守るには仕方がないこと。
悩みました。老舗の味を守るのも大事ですが、現代の客のニーズにも応えなければならないこと。
そこで辿り着いたのが、「とりあえず靴下付けとけばいいだろ」という餡でした。(餡と案をかけている。こういう事を説明しなくてもわかる読者を育てたい。)
いわば今流行りの甘すぎない甘味。柚子入り餡を老舗に加えて挑んだ次の下北沢購買会。
開演前に柚子が無くなりました。
見つけた時にはもう販売開始。まあいけるだろうとツラツラとギターを弾きました。
めくられたんですね、着物を。
出ますよね、お尻。
嗚呼、困ったと言うは建前。本心ではこう思っていました。
「まだ老舗の味を求めているお客様がいるのか」と。
作ったお菓子が塩辛くならない様に、涙を堪え考えました。
老舗過激派に餡子を、ねるねるねるねをぶつけてやろうか。
それとも昔のようにゃあいかないと、時代の流れに迎合しようか。
余談ですが、私はたまに頭の回転が速いことがあります。
そうだ。
即席で柚子入り餡子を出せばいいじゃないか。
そう思った私は、ステージ上でジャンプし高速回転をしようと思いました。俗に言うコマ回しの要領ですね。俗に言うベイブレードですね。いつぞや夢中になったドラグーンストームの如く、左回転でGOシュート!したわけであります。
我ながら良い作戦だ。老舗の味をだしつつ、新規顧客を狙う戦略。コンサルタントに転職でもしようかと思い2回転決め込んだわけです。
満足げに公演を終え、お客様に味の感想を聞きに行きました。
「お尻きれいでしたねえ」
「あと…出てましたねえ…」
ギターの音色がきれいという感想ならともかく、それ以外がきれいと聞いたのは音楽人生でも初めての経験でした。
いや、それよりも出てたとは?
ねるねるねるね、出てたのかしら?
家に帰り動画を見てみたら、まあねるねるねるね。
確かに頭の回転は速かったのですが、身体の回転がベイブレードはともかく、駄菓子屋で買ったコマよりも遅かったのです。
理想はヘリコプターみたいに、ブーーーンってなってもう速過ぎて逆回転に見えて、なんだかんだで混ざり混ざって灰色のはずだったのですが、単色でした。
色々と綴ってきましたが、これが真実です。
回す為の糸は切れてしまい、意図としていなかったことが起こったわけであります。
縦の糸は私、横の糸も私。
布は織り成せず、幸せと呼べなかった我がコマよ。
回るよ回るよ時代は回ると言いますが、このままでは溺れていくのでしょうか。
「糸は切れちまうからもう駄目だ。」
「じゃあどうやったら回れるんだい?」
「いや、コマになるのは諦めな。切れないものを用意しようとしたら、今度は”お縄”になっちまう。」
お後がよろしいようで。
さよなら。
ボンド。